●ラフマとは
 ラフマ(羅布麻、Apocynum Venetum)は、中国北部・西部原産のキョウチクトウ科トウバシクルモン属の多年生宿根本草植物(紅麻)で、中国、ヨーロッパ、アジアの温帯にかけて自生しています。樹高1.5~4メートルで、春に若葉を芽吹き、初夏に薄紅色の花を咲かせます。繊維質に富んで麻のように用いられてきたことと、原産地が「ロプノール(羅布泊)」であることから「羅布麻」と命名され、中国新疆地区産のラフマは最高級品と言われています。

   
●ラフマの歴史
 中国(特に西北地区)では古くから、ラフマを生薬として処方し、病気の治療に使われ、また葉は茶としても飲用され、日常的に親しまれてきました。しかしラフマ茶の原料として使われているのは、ほとんどがラフマの代用品、白麻か大葉白麻です。
 1970年代に、ラフマの薬理作用が各研究機関によって確認され、『中華人民共和国薬典』(「日本薬局方)に相当)に掲載されて医薬品として認められました。
 現在は脳内セロトニンを産生させるリラックスハーブとして知られているラフマですが、中国では古くから生薬として病気の治療に処方されていました。約1800年前には、『三国志』で有名な魏の武将・曹操が、当時戦争に明け暮れ、その性格からストレスやイライラがひどく片頭痛に悩まされていたところ、
専属医の医師・華佗(かだ)が、ラフマ葉を煎じて曹操に飲ませていたという記述が残っています。以降中国では、ラフマは「眠りの正常化」や「心の安定」に役立つお茶として愛飲されており、高い安全性や長い使用歴から、生活上必要な生薬として重宝されています。
『陜西中草薬』の記載によると、ラフマの効用は「平肝降圧」「強心」「利尿」とあります。現代風に言い換えれば、以下のような症状に改善作用があるといえます。
(1)高血圧によるめまい、頭痛、不眠、多夢
(2)精神不安定
(3)急性・慢性心不全、うっ血性心不全
(4)心臓・肝臓・腎臓性浮腫
など。 

●ラフマの成分
 ラフマ葉の抽出物には、フラボノイド配糖体、カテキン類、アポシニン類などが豊富に含まれることが明らかになっています。また、特異成分(そのものにだけ備わっている特別な成分)として、ヒペロシド、イソクエルシトリンなどが認められています。『漢方医学大事典』には、ラフマの生理作用として、鎮静作用、抗ストレス作用、睡眠改善、血圧安定などの効果も記載されています。

 安全性については、ラフマ葉は毒成分をほとんど含まず、ケルセチンなどのフラボノイドを多く含むことが明らかにされています。ただし、ラフマの根には強心配糖体があり、有毒とされています。使用の際は、急性毒性試験、慢性毒性試験のほか、残留農薬検査のポジティブリスト制度や一般生菌数基準、大腸菌の部生物検査などにクリアしているかどうかを確認することが大切です。
 ラフマ葉エキスは、同様の抗ストレスハーブ「セントジョーンズワート」などと比べ、“薬物への相互作用”が見られないのが特長であるため、近年、研究者の間でも大いに注目を集めています。

●ラフマの使い方
 ラフマ葉の使い方としては、歯を煎じて飲むのが一般的です。しかし、熱によって抽出できない成分もあるので、抽出法に優れたラフマ葉エキス配合のサプリメントを利用するのが最も効果的だと考えます。 

【ラフマに関するデータ一覧】
○ ラフマの安全性に関するデータ
 *急性毒性試験
 *慢性毒性試験
 *マウス骨髄微小核試験
 *精子奇形試験
 *胎児奇形試験
 *30d飼育試験
○ ラフマの抗ストレスに関するデータ
 *急性投与後の強制水泳試験
 *連続投与の強制水泳試験
○ ラフマのモノアミン神経伝達物質に関するデータ
 *モノアミン類伝達物質への影響
 *脳神経細胞膜流動性への影響